山との出会い

　10年程前の，7月中旬の事でした。友達が花を見に行こう、と誘ってくれた。

『何処に行くの』と聞くが、返事がない。

　長野県駒ヶ根インターを下りた時、百名山の木曽駒ヶ岳、千畳敷カールに来た事が分かった。駒ヶ根高原菅ノ台よりマイカーは入れず、地元のバスに乗り換え50分程でロープウエイ乗り場へ。ロープウエイに乗れば雲上の人となり雄大な峰が連なる。此処からの眺めは、感動と興奮の序章です。
　

　千畳敷駅を一歩出ると、そこは爽やかな風がそよぐ高原の台地です。目の前には千畳敷のお花畑が広がります。お花畑には、黒百合、チン グルマその他の花が順を追って咲くそうです。

遊歩道では、観光客の感嘆の声がこだましていました。もっと多くの花を見たいと思っていたとき、リーダー格の人が『上まで登って見るか』と言ってくれた。
　

　今思えば、計画書も経験も無く、靴はトレッキングシューズ、持ち物も小さなザックにおにぎり・お菓子少々・ジュース、ウインドブレーカ と怖いような軽装です。千畳敷から、浄土乗越までの登りはきついが、ロープもあるので、これを頼りに落石に注意しながら登る。次第に勾配もきつくなり、心臓 は張裂けんばかり、息も荒くなる。この試練の先に何があるのか、その時の私には見当 がつきませんでした。

　やっと山小屋が見えたときは、嬉しさの余りへたり込んでしまいました。今度は、山小屋にトイレを借りに行った時『お金が無いとトイレが借りられない』 と驚きの体験です。汚水処理が大変な事が分かり、何も知らなかった私達も納得。中岳で昼食のおにぎりを食べながら見た、鋭い岩峰の宝剣岳は，只々見とれるばかりでした。誰からとも無く『この山に登ろう』と いう事になり決行。しかし宝剣岳は、岩場で鎖場も多い。実際 、動けず立ちすくんでいる人を見かけたが、私達は慎重に歩を進めた。

　頂上は狭く、私には怖くて立つことは出来ませんでした。諦め て引返そうとした時、眼下に見えた展望は、素晴らしいものでした。崖に誇らしげに咲く花々、私を天国と思わせてくれた群落、衝撃的な花との出会いです。此処で私達は、色とりどりに咲く高山植物とアルペン的景観を余すことなく体験できたことを一生忘れないと思います。

　数年後、市のクラブに入会。体力に自信はありませんが、標高はそんなに高く無くとも、天国と思えるような高山の花々が咲き乱れる山々を訪れたいと思いつつ、そしてもう一度宝剣岳に挑戦したいと願って います。